「ヒストリーオブバイオレンス」
この映画をアクション映画としてみるよりも、
「昨日まで仲良かったのに、突然心変わりした彼女に対する怒り」をお持ちの方とか、
「長年連れ添ってきたのに何で離婚とか言い出すんだよ!」
「何で破談なんだ!」
とか思った経験のアル方が見ると実によくできていることにお気づきいただけると思います。
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早い話が、極悪なマフィアだったんだけれども、田舎に逃げてきて名前も変えてひっそり暮らしていて、何にも知らない奥さんと子供と暮らしているという男の物語。往年の高倉健さんの映画のような設定です。
でね、この映画はラスト30分に、特にラストカットに異常なまでの「男」エナジーが注ぎ込まれているわけ。
むかし「あぶない刑事」でもこんなセリフがありました……
「男を変えたがるもんさ女は……」
映画の中では、変わってくれと言われたわけではないにしろ、ヴィゴ・モーテンセン演じる主人公は無理から性格から人格まで、人生すべて変えようとしてたわけです。そのかいあって少なくともうまくいっていたし、家庭までもてた。
ある日そこに逃亡犯が平和な生活を壊しに街へとやってきて彼の経営する小さなカフェが襲われてしまう。
「どうしよ、こいつら殺っちゃえるんだけどなあ…… どうしようかなあ、そしたらいろいろばれそうだしなあ…… でもほら、ここで俺が一発ガツーンとやってみんなの命守ったらさ、俺の過去とか、理解してくれるんでね?」
これは彼にしてみれば些細なきっかけなんだけど「ありのままの自分を理解してほしい、
もう疲れたな、いい人演じるのもさあ、もう許してよ……」という抑圧されたものが吹き出るきっかけになるわけで、前半のストーリーはその葛藤がきっちり描かれている。
見ているこちらとしては、もういいよ、あんたカッコいいよ! ありのままの自分でいいじゃないか! やっちまえ! とばかり盛り上り、当然惚れた女にも理解されて、抱き合いたいところなんだが……
この映画の嫁はんは、これがまた、理解しないんだな(俺にはわかるこの状況・・・)
ださくても普通のままのあんたでいいのよ!
カッコよくなんかないわよ、この不良オヤジ!
いつまで夢見てんのよ! (そこまではいってないか・・・)
てきな罵倒が聞こえてきます。
そりゃ主役の彼にしてみたら「なんだよ、なんなんだよ! 家族守ってんだぞこちとら命がけでよお!!!!」
このすれ違い感。ああいえば、こういう感。ラストのあの静寂に染み入っていく彼の表情とあの空気。
いやあ見事ですよ。
見終わった後からこれだけじわじわくる映画は久しぶり。
お父さん、一人で酒飲みながら見ましょう。これは男心の映画ですから!
奥様と一緒に見たら、おそらくこの映画のなかの「嫁はん」に共感しちゃいます……
(そしたらあのラストの表情を浮かべて、我慢ですよお父さん!)
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